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コラム

熱計算について

通常、制御盤の中にはたくさんの機器が入っています。
これらの機器は一般的に熱に弱く、高温時には誤動作や機器の劣化などのトラブルを引き起こします。
屋外の、直射日光を受けるような立地では、制御盤内の温度が50℃付近まで上昇することもある為、きちんとした熱対策をする必要があります。
しかし、熱対策に対して明確な規格がないため制御盤メーカーは独自に熱計算を行うことで最適な熱対策の方法や機器の選定をしています。

代表的な熱対策方法

熱対策方法には大きく分けて【自然換気】【強制換気】【強制冷却】の3種類があります。
代表的なものに以下のような方法があります。

自然換気

ルーバー
筐体に換気孔をあけ、外気を自然に筐体内に取り込む方法。

強制換気

盤用喚気扇
筐体に換気扇を設置し、外気を強制的に筐体内に取り込む方法。

強制冷却

ペルチェクーラー
クーラーを設置し、ペルチェ効果によって外気と筐体内の熱交換を強制的に行う方法。
※東洋電装では自社でペルチェクーラーを製作しています
コンプレッサー式クーラー
クーラーにより強制的に筐体内の温度を調整する方法。

お客様の要望、必要冷却能力によって熱対策の方法や機器の選定が異なります。

熱計算って?

「熱計算」には大きく分けて「発熱量計算」と「放熱量計算」があります。
発熱量計算」とは各機器から発生する熱量を集計することです。
放熱量計算」とは筐体から周囲に放熱可能な熱量を算出することです。

外形寸法

熱計算において外形寸法は重要な要素となります。

なぜなら外気への放熱量は放熱面積(表面積)に比例しているからです。
そのため換気扇が付けられない場合などには、あえて筐体を大きく設計することで放熱面積を大きくすることもあります。

~ちょっと一言~

自動車のラジエーターの形状は理にかなっている!?

自動車のラジエーターは、エンジンの熱を冷却水に伝えてエンジンで発生する熱を下げる仕組みです。
このように「加熱された固体」と「流れる液体」との間で「熱をやり取りする」ことを熱伝達(対流)と言います。
熱伝達は表面間で熱が移動するため、接触する面積を大きくすることで熱の移動速度が上がります。
例えば、バイクのエンジンに刻まれたフィンは外気との接触面(表面積)を大きくして冷えやすいように工夫された形状で、さらに風が当たることでより冷えやすくなっています。

このことから、熱の移動速度は

  • 物体の表面積
  • 流体の速度
  • 温度差

に比例することが分かります。これを「ニュートンの冷却の法則」と言います。

立地条件

立地条件は熱計算において非常に重要な要素となります。

〇「屋内設置」なのか「屋外設置」なのか?

屋内外で筐体の外部環境に大きく異なる点が2つあります。
1つ目は盤が日射を受けるのかどうかという点
2つ目は盤の周囲で風が吹いているのかどうかという点
です。

屋外設置では直射日光による輻射熱も計算に加えなければならない点で注意が必要です。
また、盤周囲の風速の影響で表面の熱伝達率が異なります。
そのため「屋内設置」なのか「屋外設置」なのかでそもそもの計算式が異なります。

〇「設置状態」はどうか?

制御盤の筐体の周りに壁やものがあるのかによって放熱のスピードが変わります。そこで設置状態も考慮して熱計算を行います。
設置状態には大きく分けて8種類あります。

A.1面からの放熱が妨げられている場合
B.2面からの放熱が妨げられている場合
C.2面からの放熱が妨げられている場合
D.3面からの放熱が妨げられている場合
E.3面からの放熱が妨げられている場合
F.4面からの放熱が妨げられている場合
G.全面放熱の場合(キャスター付など)
H.背面からの放熱が妨げられている場合(壁掛け)

最適な熱対策方法を決定する

〇「発熱量」=<「放熱量」の場合
特別な熱対策を行わなくても温度上昇を抑えることができます。
〇「発熱量」>「放熱量」の場合

必要冷却能力を加味して【自然換気】【強制換気】【強制冷却】いずれかの方法での熱対策が必要となります。

熱対策方法の具体的な検討内容として

  • 【自然換気】を選択する場合
    どの高さにどの程度の換気面積を確保する必要があるのか
  • 【強制換気】を選択する場合
    どの程度の風量を必要とするのか(機器の選定)
  • 【強制冷却】を選択する場合
    どの程度の冷却能力を必要とするのか(機器の選定)

などがあります。

これらの要素を盛り込んで設計していきます。

制御盤は様々な外部環境に対して中の機器を守るために適した熱対策を行っています。
今回ご紹介した熱計算はその対策方法を決定するための大事な工程なのです。

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